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この雨は止むのだろうか [超ショートショート]

豪雨.jpeg

突然の豪雨によって私たちは○○川の川沿いにある小さなバラック小屋に避難することになった。
雨足はどんどん強くなっているし、川の水位は確実に上がってきている。
私たちは今後、どのように行動したらいいかを話し合っていた。

Aさんの意見はこうだ。
今すぐこの場を離れよう。
この雨は当分止みそうにない。
天気予報でもそう言ってたし、実際雨足も強い。〇〇川が決壊するのも近いのではないか。

Bさんの意見はこうだ。
このままここに留まって雨宿りをしている方がいい。
この雨はまもなく止むことだろう。天気予報なんてものは目安に過ぎない。
すぐにこの小屋を出て、びしょ濡れになるなんて真っ平ごめんだ。
実際、どうなるか予測出来たら、災害被害なんて出る訳がない。

どちらの意見ももっともなように思えた。
そのとき、突然、部屋の電気が消えた。
これには、その場にいるすべてがパニックを起こした。
雨の影響で停電でもしたのか?と誰しもが考えたのだ。間違えて電気のスイッチを消してしまった私以外は・・・。

停電(実際には、スイッチを切っただけなのだが)が起こったことで、そこにいる全ての人が、Aさんの意見を支持した。反対意見を呈したBさんでさえも。
事の真相を知っている私も、とりあえずは多数決に従う他なかった。
ここで、皆さんはこう考えるだろう。
「べつに意見に従う意味はない。ただ、間違えてスイッチを消したと報告するだけでいいのではないか」と。
しかし、それはできない相談だ。
何しろ、停電した瞬間(実際には電気を消しただけなのだが)の、人々の狼狽ぶりは常軌を逸していた。
皆、雨によって閉じ込められていることに、少なからず不安を感じていたようである。
その不安な状態に、追い打ちをかけるように停電(実際は電気を消しただけ)。
抑えていた恐怖のタガが外れてしまって、ものすごい感情の爆発が起きたのだろう。
だから、そこに居る全ての人が「しばらく雨は止まない」派に簡単になびくことになったのだ。

ああ、どうしたらいいんだ。
単にスイッチを切っただけなので、特に深刻な事は起きない筈なのに。
ここから出てぐしょ濡れになるのは嫌だなあと思いつつ、
私はそのまま黙っている事にした。


私たちがその小屋を後にした直後
その場に残されたラジオからこんな放送が流れた。

〜臨時ニュースをお伝えします。
昨夜より降り続けている強い雨の影響で
〇〇川が決壊する危険があります。
〇〇川の近くにいる皆様は、直ちに避難してください。〜



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