暗転 [超ショートショート]
怖くてたまらない。
目が覚めてから、指一本さえ動かせなくなっているからだ。
いったいどうしたことだろう。
恐怖はさらに大きくなっていく。
なぜなら、見えないところでガサゴソ音がするからだ。
私は怒った。
全く体が動かない理不尽さに対して、怒った。
怒って、どうにかなる状況ではないだろうが
体が全く動かせない状況では、何らかの感情を働かせないと
怖くて、どうにかなってしまいそうだ。
だから、とりあえず怒った。
すると、怒りのためか
手足に血が通ったような感じがしてきた。
これがもっと進むと、手足が動かせるようになるかもしれない。
しかし、次の瞬間、私は悲しくなった。
それまで体が動かせないばかりか、感覚もなくなっていたのだが
手足に血が通う感覚が戻ってきたために、触覚も覚めてきたようだ。
見えないところで、ゴソゴソ動き回る音が
今度は触覚として感じられるようになってきた。
その感じは、どうも大きめの甲虫が無数に這い回っている感じだ。
もう、悲しいというよりはおぞましい感じ。
そのとき、私は絶望的なことに気付いた。
もう既に何度も、この状態を経験している。
何度も目覚め、そして触感だけ覚めては、また昏睡してしまう。
また、だんだんと意識が遠のいてきた。
後、何度これを繰り返すのだろうか。
・・・・・・・・・・・・・
怖くてたまらない。
目が覚めてから、指一本さえ動かせなくなっているからだ。
いったいどうしたことだろう。・・・・
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