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理想の場所 その1

苫小牧駅前.jpg 私はどうしても東京へ行きたいと思った。 こんな何もない田舎の暮らしに辟易していたからだ。 田舎と言っても、自然に囲まれていて、夜になったら満点の星空が落ちてくるようだ・・・なんて 「君の名は」とかに出てくるような素敵な場所だったら、好きになれるだろう。 中途半端に都会で、中途半端に田舎。 日本の地方都市を想像してくださいと言われれば、まずパッと思い浮かぶくらいありふれていて、 ドラマが生まれる期待が全く持てないような場所。 駅前には以前はダイエーだったエガオとかいう名前の百貨店があって かつての喧騒は見る影もなく、人通りもまばら。 客足は郊外にあるイオンに根こそぎ持っていかれて 潰れるのを待っているように、ただそこに存在している。 私が子供のころは、その名の通り笑顔のある百貨店だった。 街で一番の百貨店に行って、買い物をして 最上階にある食堂でお子様ランチを食べる。 昭和のドラマでよく出てきたような光景が、ドラマそのまんまで再現されていた。 この街だけが特別ではない。 日本中のどこにでもあり、幾度となく繰り返されてきたワンシーン。 子供の頃は、そのありふれていることが幸せだった。 私も、他の家族たちもみんな笑顔であふれていた。 今や、笑顔は名ばかりになって、心は笑っていない能面のような笑顔が残っているだけだ。 エガオという名前は、本当に皮肉としか言いようがない。 一方、エガオ側の出口は寂れ切っているが 反対側の出口は逆に少し賑わっている。 パチンコの大型チェーンがあるからだ。 田舎の娯楽は限られている。 カラオケと、パチンコくらいのものだ。 わたしにとって、そのどちらも縁遠い。 だから、エガオの反対口にはほとんど行ったことがない。 本当のところ、実際賑わっているのかもよく知らない。 とにかく、ここが嫌だった。 この場所以外なら、どこでも良かった。 同じような何の変哲もない地方都市じゃ困るけど 別に東京である必然性はなかった。 しかし、何の特徴もない地方都市に住んでいるものとしては 東京以外の都会のことは分からない。 東京だってテレビで見ることのできる以上のことは分からないが テレビで見たことがある!というのは憧れの要素の多くを占めるものだ。 地元球団のない地方では、大抵の人が巨人ファンだ。 それは、本当に巨人が好きなのではなく、よく見るから好きなのだ。 だから、本当のところ どうしても東京に行きたいのではなく どうしてもこの場所以外のどこかに行きたいと思った。
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