叫びだしたい [超ショートショート]
本当なら叫びだしたい。しかし、それはできない。
なぜならば、ここは試験会場だからだ。
本来なら、静かにしていなければならない試験会場で叫びだしたいという欲求を持つこと自体が間違っているのだが、叫ばずにはいられない余程の理由があると思っていただきたい。
その理由はほかの人にとってみれば、とるに足らない、それこそ叫ぶ程のことでもないのかもしれない。しかし、当の本人である私にとっては叫ぶに値する問題なのだ。
こんな風に躊躇している間にも、時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。
これはもう思い切って叫んでしまえばいいのではないか。
いや、そんなことをしたら確実に試験に落ちてしまう。何せ、私は既に三浪目だ。もう後はない。今年こそ、受かりたい。
周囲が騒ぎはじめた。
叫びこそしてはいないが、私の動揺が周りに伝わってしまったようだ。
「そこ!静かに!」
試験官の怒号が響く。
私は決めた。もう、どうなってもいい叫んでしまえ。
そう心に決めて、思い切り息を吸い込んだ瞬間……。
目が覚めた。
目の前には、白紙の答案用紙があった。
試験の残り時間はあと一分…。
小説家志望ランキング
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2019-07-01 09:46
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