自分の性質 [超ショートショート]
本当ならA社の株を売り払ってしまいたい。しかし、それはできない。
株価の急激な下落によって、既に相当の損失を被っている。
もうこれ以上、損失を出したくはないとは思うのだが、もう少し待つことで、事態が好転し、利益をだせるかもしれない。。。
利益を出すまで、いかなくても少しでも損失を取り戻せるかもしれない。
「もしかして・・・」を考えると、売り払うという結論が出せないでいるのだ。
時間は刻々と過ぎてく。
それと共に、株価はどんどん下落していく。
私はどうすればいいんだ。
周囲が騒ぎはじめた。
また、急激に株価が下落したようだ。
投資を始めたばかりの頃、どこの株を選んだらいいかも分からない状態だった。
そこで、何となく選んだA社の株があれよと利益を出し続けた。
「リスクは分散した方がいい」「引き際を見極める事が大切だ」と
周りからはうるさく言われていたが、聞く耳を持つ事が出来なかった。
A社の株に資金を投入すれば、するほど、何倍ものリターンが帰ってきた。
だから、資金の全てをA社につぎ込んだ。
全てが順調だと思っていた。
ところが3ヶ月前
A社の粉飾決算が発覚した。
それに合わせるように、A社の製品のリコールが起きた。
このダブルパンチで、A社の株価は急落。
何とか会社の立て直しに努めていたようだが、
株価はどんどん下がり続け、私の利益は完全に溶けてしまった。
私は決めた。もう止めてしまおう。
A社の株を全て売り払った。
私は、資産の全てを失ってしまった。
次の日、A社は画期的な発明をしたと報道された。
様々な不祥事から立て直しが進んでいるようだ。
きっと、株価は急上昇することだろう。
私は屋上から空を見上げていた。
その日の空は一点の曇りもない青空だった。
空の青さが眩しくて、鼻の奥を刺激した。
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2019-07-02 10:11
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