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ニート [超ショートショート]

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本当なら就職しなければならない。
しかし、それはしたくない。
やりたい、やりたくないの前に
果たして可能なのか?

時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。
中学生の頃、ひきこもり始めてから三〇年間、働くどころか家を出てさえいない。
そんな自分が働く?
とても無理な話だ。

しかし、先月、両親が事故で突然亡くなってしまった。
兄弟もいない。
親戚はいるにはいるが、中学生の時以来、私の存在など無視している。
父親の弟とかいう人が、葬式の一切を取り仕切ってくれたが感謝はしていない。
亡き両親の土地を何とか自分のものにしたい下心が透けて見えているからだ。

通夜の夜、私に聞こえるように
この家をどうしたらいいかの相談をしていた。
更地にしてマンションでも経営しようか、自分たちの家でも建てようか
自分の兄が突然亡くなったにも関わらず、嬉しそうに未来を語っていた。
つまり、私の存在が邪魔なわけだ。

次の日、猫なで声で
ニート支援の住み込み施設のパンフレットを渡された。
「おじさんとして、君の事が心配なんだよ。
このまま誰もいない家に居続けても、将来がないだろ?
自立の一歩を進める為にも、思い切って家を出てみたらどうだろう?」

将来なんて、とっくの昔に無くなっている。
将来の事が考えられるものなら、とっくに引きこもりなど止めている。
私は決めた。この家とともに自分の人生を終わらせよう。
葬式が終わり、親戚が帰った後、私は家に火をつけた。

まるで生き物のように燃え広がる炎を、怖いとも思わず、ただ眺めていた。


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